原子吸光法の特徴や原理は?原子吸光の長所・短所について知ろう!
2016/01/25
あなたが公害防止管理者を目指しているなら、きっと"原子吸光法"という言葉に興味を持っていることでしょう。
この特殊な現象は、元素の量を測定する際に非常に役立ちます。しかし、原子吸光法の具体的な仕組みや特徴、そしてその長所・短所まで理解できる人は少ないかもしれませんね。
それを踏まえて、今回は原子吸光法について一から丁寧に説明します。公害防止管理者としてのスキルアップに必要な知識を深めるため、本記事をぜひ参考にしてください。一緒に学びながら、より良い環境の実現に向けて歩みましょう!
1.原子吸光法とは?
原子吸光法は、原子吸光分析とも言いさまざまな分野で使用している定量分析法です。ここでは、原子吸光法とは何なのかを詳しく説明します。
1‐1.原子の吸光現象を利用している
原子吸光法は、定量分析法の1つです。原子には、特定の波長を吸収する特徴を持っています。原子の「吸光現象」を生かし、金属元素の定量分析ができるようになっているのです。原子の吸光現象は、特定波長の光を原子に当てたとき起こります。高温に加熱した原子に光を照射します。一般的に、分析対象となるのは「溶液」です。溶液の中に入っている微量の元素を検出するために原子吸光法を利用します。たとえば、環境汚染になる工場排水の検査です。工場排水の中にある微量元素を見つけるにはぴったりの方法でしょう。
1‐2.微量な元素の定量が可能
原子吸光法は微量な元素の定量が可能です。
まずは、測定したい試料を高温にして原子化しなければなりません。原子化した試料に光を当てて吸収スペクトルを測定します。微量な元素の定量が可能になることで、多くの分野で原子吸光法を採用しているのです。
特に、無機元素分析の公定法になっています。原子吸光法を利用するには、専用の装置が必要です。原子吸光分析装置と言いますが、装置は主に光源部・試料原子化部・分光部・測定部にわかれています。光源部は放電ランプや中空陰極ランプを利用して高周波を原子にかけるでしょう。放射強度は比較的高めです。試料原子化部は、分子を熱かい離して、原子蒸気を生み出します。対象の物質を原子化するところです。そして、分光部や測定部では光の吸収強度を測定して本格的な定量をします。
1‐3.さまざまな場所で応用されている
さまざまな分野で使用されている原子吸光法ですが、応用として主に産業分野で採用されています。そして、ほとんどの金属元素が定量できる方法が原子吸光法です。よって、土壌の中に入っている金属元素の定量や工業用排水、河川・海水などの測定に使用します。環境汚染の研究はもちろんのこと、化学・食品・生体試料中の金属元素、農業などにも幅広く採用しているのです。公害を防ぐためにも、金属元素の測定は必要不可欠になります。現場や作業場では公害が起こる可能性もあるでしょう。公害防止管理者は人の健康、安全を守る大切な役割を担っています。さまざまな場所で応用されている原子吸光法だからこそ、正しく理解しておかなければなりません。
1-4.原子吸光法を利用した公害防止のための検査について
原子吸光法を利用すれば、微量の金属を検出できます。そのため、土壌・工業用排水、河川・海水の水質検査に利用すれば、微量の金属元素であっても検出可能です。金属は銅や水銀をはじめとして公害の原因となります。そのため、微量でも金属を検出できる検査方法が必要です。
2.原子吸光法の特徴・原理
2‐1.化学炎を利用するものと利用しないもの
金属元素を定量化するには「原子吸光法」が最適です。高温に加熱した原子に光を照射して光の強度を測定することにより微量な元素を定量化する方法になります。原子吸光法の特徴は、光の吸収スペクトルを測定するだけではありません。対象のものを原子化するため、化学炎を利用する方法と利用しない方法があります。化学炎で原子化する方法は「フレーム法」、化学炎を利用しないものは「フレームレス法」と覚えておいてください。主に、フレーム法は工場排水のような水溶液を対象としています。それぞれ対象によって方法は異なりますが、フレームレス法の中でも黒鉛を利用した「ファーネス法」は、フレーム法よりも高いレベルで分析できるでしょう。ただし、ファーネス法に使うさまざまな器具は定期的な点検が必要になります。
2‐2.原子吸光法の原理
「原子吸光法」と聞けば難しいと感じる人は多いでしょう。けれども、原理はシンプルです。原子は光を吸収する特徴を持っています。基底状態にある原子は光が吸収しやすいのです。試料を原子化して原子蒸気をつくらなければなりません。基底状態にするため、まずは原子を蒸気層の空間中に持っていきます。原子蒸気をつくったら適当な光を当てて、原子の吸光を調べるのです。吸光度によって試料の濃度を調べることになります。原子吸光法は、ほとんどの金属元素の定量ができるでしょう。けれども、水素や炭素・イオウ・ハロゲン・窒素などの元素は分析できないので注意してください。元素の定量を調べるために、さまざまな企業や研究機関が原子吸光法を活用しています。
3.原子吸光法の長所・短所
3‐1.原子吸光法の長所
何と言っても原子吸光法の長所は、「金属元素の微量な定量が可能である」ことです。それぞれの金属元素によって特定の波長は異なります。原子吸光法は元素に適切な光を照射しなければなりません。だからこそ、金属元素の微量な定量が可能になるのです。
原子吸光法でも使用する装置によって長所が異なります。たとえば、化学炎を使用するフレーム法は、価格が安く、操作が簡単です。燃料代も安いので気軽に利用できるでしょう。化学炎を使用するファーネス法は、フレーム法よりも100倍の感度を持っています。単元素が測定できるので、少量の試料でも対応できるのがメリットです。
また、可燃性ガスを使用しないため夜間でも自動運転ができるでしょう。方法によってメリットが異なるので、比較するといいですよ。
3‐2.原子吸光法の短所
原子吸光法は長所もありますが、短所もあります。主な短所は、「多元素を同時に分析できない」点です。元素に合った特定の光を照射するので多元素を同時に測定できません。一気に測定したいケースには向いていないでしょう。定性分析には不向きなので気をつけてくださいね。
また、原子吸光法を使用するにはランプが必要です。ランプがなければ測定できません。原子吸光法は使用目的・使用環境によってデメリットが異なります。きちんと活用するためにもデメリット部分を把握しなければなりません。そして、使用目的・使用環境に合った方法を選択してください。専用の装置を使用するため、定期的な点検・メンテナンスが必要になります。
メンテナンスを徹底するのも公害防止管理者の大切な役割です。メンテナンス・点検のミスによって公害が起こる可能性もあります。十分に注意して取り扱っていきましょう。
4.公害防止管理者とはどのような資格?
公害防止管理者とは、「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」に基づき、公害防止のための検査や教育などを行うことのできる資格です。製造業・ガス供給業・電気供給業・熱供給業のどれかに属しており、ばい煙や粉じん・汚水・騒音・振動・ダイオキシンのいずれかを排出する設備を備えている工場(特定工場)は、公害防止管理者を選任する義務があります。
現在、公害防止管理者には大気・水・騒音などの13の資格区分があり、取得した資格区分に関する公害が発生する可能性のある工場で、検査等の職務を行うのです。
5.原子吸光法に関するよくある質問
Q.原子吸光法は、1度に1種類の元素しか測定できないのですか?
A.はい。その通りですので、複数の元素をいっぺんに検査することはできません。
Q.公害防止管理者でないと、公害防止のための検査は行えないのですか?
A.はい。検査自体は無資格でも可能ですが、必ず公害防止管理者の立ち合いや確認が必要です。
Q.公害防止管理者がどうしても選任できない場合は、どうしたらよいでしょうか?
A.自治体の担当課に連絡して猶予をもらい、至急募集をかけてください。
Q.公害防止管理者の資格区分はいくつでも取得できますか?
A.はい。可能です。
Q.これ1つ取ればすべての公害防止に関する活動ができる資格はありますか?
A.現在のところ、ありません。
6.原子吸光法の特徴や原理まとめ
原子吸光法とは何なのか、特徴や原理、長所・短所について説明しました。金属元素は特定の光を吸収します。吸光性を生かして元素の定量を測定するのが「原子吸光法」です。主に、環境汚染の研究や工場排水、河川、海を対象に測定をしています。ほかにも、食品や農業などさまざまな分野で採用している測定法です。
しかし、多元素の測定には不向きです。使用目的や使用環境によって適切な方法が異なります。しっかりそれぞれの特徴や長所・短所を理解して原子吸光法を活用していきましょう。公害防止管理者としては大切な知識です。
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