冷凍機械責任者は委託できるの? 業務内容や資格取得について
2017/02/09
冷凍機械にかかわる高圧ガスを製造する施設には、保安業務をおこなう冷凍機械責任者が必要です。しかし、事業所内に有資格者がいないケースもあるでしょう。そんなときは、冷凍機械責任者を外部の有資格者に委託できるのか、それともほかに方法があるのか、困ってしまうものです。
そこで本記事では、冷凍機械責任者の基礎知識や必要性、委託・試験内容・勉強法などについて詳しく説明します。
この記事を読むことで、冷凍機械責任者の委託や資格取得のために必要な情報を知ることができます。冷凍機械責任者について知りたい方は、ぜひチェックしてください。
1.冷凍機械責任者の基礎知識
外部業者への委託について知る前に、冷凍機械責任者の基礎知識を把握することが大切です。資格概要や準拠する法律などについて詳しく見ていきましょう。
1-1.資格概要
冷凍機械責任者は高圧ガス製造保安責任者の資格のひとつです。工場や商業施設内にある冷蔵倉庫は高圧ガスを利用しています。そのため、高圧ガスを扱う専門知識が必要です。冷凍機械責任者は高圧ガスの基礎知識を習得している証明になります。
1-2.準拠する法律
冷凍機械責任者は高圧ガス保安法に準拠した国家資格の一区分のことを指します。高圧ガス保安法とは、高圧ガスの製造・販売・移動・輸入・貯蔵・消費・廃棄内容などが定められている法律です。高圧ガスによる災害防止や公共安全の確保を目的としています。
1-3.職務
冷凍機械責任者は冷凍にかかわる高圧ガスを製造する施設で、保安業務をおこなう資格です。高圧ガスを安全に使うための保安業務を軸として、指揮・指導業務、高圧ガス使用設備の定期点検、災害発生の防止や発生したときの改善策を立てることも大切な仕事になります。高圧ガスの設備に関係する仕事全般を担う資格です。
1-4.分類
冷凍機械責任者には第一種・第二種・第三種があります。種類によって職務の範囲が異なるため、事前にチェックしておきましょう。
- 第一種:すべての製造施設における保安業務
- 第二種:1日の冷凍能力が300トン以内の製造施設における保安業務
- 第三種:1日の冷凍能力が100トン以内の製造施設における保安業務
2.冷凍機械責任者の必要性と委託について
一定規模以上の冷凍設備を有する事業所は、有資格者を選任しなければなりません。職場に有資格者がいない場合は、外部業者に委託できるのでしょうか。
2-1.必要性
1日の法定冷凍能力が300トン以上の施設は第一種冷凍機械責任者、100トン~300トン以内は第二種、50トン~100トン以内は第三種の選任が事業所の責任者に義務づけられています。責任者が選任し、都道府県知事への届け出が必要です。高圧ガスは扱い方を間違うと、爆発や火災を起こす危険があります。そのため、高圧ガスに詳しい有資格者がきちんと正しく扱わなければなりません。
2-2.主な職場
冷凍機械責任者の主な職場は、工場や商業施設・ビルなど大規模施設です。大型の冷蔵機械・冷凍設備を取り扱っている会社や企業・ビル管理会社に努め、冷凍機械の保安業務に努めることになるでしょう。特に、ビルなどには大型施設があるため、有資格者が大活躍します。
2-3.外部委託について
事業所内に有資格者がいない場合は、資格取得者を新しく雇うか、それとも、現在働いている従業員に資格を取得させて選任しているところがほとんどです。法律では、高圧ガスの製造許可を取得している事業所から有資格者を選任しなければならないと決められています。そのため、外部委託をする場合、委託契約会社が製造許可を取得しなければなりません。
3.冷凍機械責任者の試験について
冷凍機械責任者の受験資格や試験概要・受験料などについて詳しく説明します。取得を考えている方はぜひチェックしてください。
3-1.受験資格
冷凍機械責任者は国家資格のひとつです。受験資格は特別決められていないので、年齢・学歴・経験に関係なく誰でも受験できます。気兼ねなく試験が受けられるのも、冷凍機械責任者のメリットですね。
3-2.試験概要
それでは、試験実施日や実施地域・試験内容など具体的な内容について見ていきましょう。受験前に必ずチェックしておいてください。
3-2-1.実施日
高圧ガス保安協会が、毎年11月ごろに実施しています。年に1回だけなので、申し込みをし忘れないように注意しておきましょう。忘れてしまうと、来年の実施日まで待たなければなりません。
3-2-2.実施地域
実施地域は各都道府県です。自分の住まいから近い試験会場を選んでください。
3-2-3.試験内容
試験はマークシート方式の筆記試験です。試験科目は第一種・第二種・第三種で異なるため、事前に確認しておきましょう。それぞれの試験科目は以下のとおりです。
第一種
- 高圧ガス保安法にかかわる法令
- 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な高度の保安管理技術
- 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な応用化学と機械工学
第二種
- 高圧ガス保安法にかかわる法令
- 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な通常の保安管理技術
- 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な基礎的な応用化学と機械工学
第三種
- 高圧ガス保安法にかかわる法令
- 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な初歩的な保安管理技術
3-3.実務経験について
国家試験の中には、資格と関係のある実務経験を有する者でないと受験不可となる資格があります。しかし、冷凍機械責任者に実務経験は必要ありませんので安心してください。実務経験がない人でも気軽に受験できます。
3-4.受験料
試験を受けるためには受験料の支払いが必要です。受験料は資格の種類と申し込み方法によって異なります。
- 第一種:インターネット受付 12,400円/書面受付 13,000円
- 第二種:インターネット受付 8,500円/書面受付 9,000円
- 第三種:インターネット受付 7,900円/書面受付 8,400円
3-5.申し込み方法
申し込み方法はインターネット受付と書面受付の2つがあります。インターネット受付の場合、7月上旬から高圧ガス保安協会のホームページにて掲載されるでしょう。書面申請も同じ時期に受験案内と願書が配布されます。配布場所は高圧ガス協会試験センターまたは、都道府県試験事務所などです。申込期間が決まっているため、早めに準備して申し込みをしてください。
3-6.難易度・合格
近年の合格率を見てみると、第一種はおよそ41%、第二種はおよそ39%、第三種はおよそ49%です。国家試験の難易度としては、「やや易しい」レベルといえます。試験科目の中でも、保安管理技術と学識の難易度が高いため、しっかりと勉強する必要があるでしょう。勉強しておけば1発で合格できる可能性はあります。
4.冷凍機械責任者の講習について
冷凍機械責任者は、高圧保安ガス協会が主催する講習を受けると、国家試験の科目を一部免除できる制度があります。一体どのような講習内容なのか、詳しく見ていきましょう。
4-1.講習による一部試験免除制度について
科目免除が受けられる講習制度を利用して、国家試験を受けるのもひとつの方法です。一部試験免除制度は、講習を受けて技術検定に合格すると、国家試験で法令の1科目だけの受験となります。ほかの2科目を勉強する必要はありません。ただし、第一種・第二種については2科目が技術検定の対象となります。
4-2.講習概要
講習の開催日時や内容・受験料について説明します。
4-2-1.開催日時
講習は資格の種類によって開催日が異なります。第一種は年に1回、5月下旬ごろに全国5か所程度で開催予定です。第二種と第三種は年に2回、2月ごろと6月ごろに全国20~30か所程度で開催されます。詳細日程に関しては、高圧ガス保安協会のホームページをご覧ください。
4-2-2.講習内容
講習内容は第一種と第二種が法令・保安管理技術・学識の3科目をそれぞれ7時間ずつ、3日間かけて講義がおこなわれます。第三種も3日間の講義となりますが、法令が7時間、保安管理技術が14時間となっており、学識の講義がありません。そして、3日間の講義を受講した者だけが検定試験の受験資格が与えられます。検定試験内容は第一種・第二種が保安管理技術と学識の2科目、第三種が保安管理技術の1科目だけです。
4-2-3.受講料
受講料は申し込み方法と資格の種類によって異なります。それぞれの受験料は以下のとおりです。
- 第一種:一般申込 21,100円/インターネット申込 20,500円
- 第二種:一般申込 18,900円/インターネット申込 18,400円
- 第三種:一般申込 16,200円/インターネット申込 15,700円
4-3.法定義務講習の概要
高圧ガス保安法において、一定規模以上の高圧ガス製造事業所に対する保安責任者は、一定期間ごとに講習を受けることが義務づけられています。保安企画推進員の場合は、初回が選任された日から6か月以内、2回目以降は5年に1回の受講が必要です。保安主任者と保安係員の場合は、初回が交付を受けた日から3年以内、2回目以降は5年に1回講義を受ける必要があります。
4-4.各種講習の申し込み方法
講習の申し込みは、インターネットまたは専用郵便振替となります。インターネット申し込みは高圧ガス保安協会のホームページから可能です。専用郵便振替の場合は、専用郵便振替用紙に記載し、郵便局の窓口で手続きをしてください。
5.冷凍機械責任者の資格取得の勉強法
1発で試験を合格するためにも、毎日勉強を続けていかなければなりません。合格するために必要な勉強法について説明します。
5-1.過去問題
試験勉強において過去問題は必ず解いておかなければなりません。なぜなら、過去問題から問題が提出される可能性があるからです。同じ問題でなくても、似たような問題が出題されるケースもあります。過去問題はできるだけたくさん解いておいたほうが良いでしょう。下記におすすめの過去問をピックアップしてみたので、ぜひチェックしてみてください。
5-2.参考テキスト
過去問と同じく、必要な勉強アイテムがテキストです。たくさんの種類があるテキストですが、自分にとってわかりやすい内容かどうかが大切なポイントとなります。また、試験に出題される重要ポイントを押さえているかどうかも大切です。テキスト選びに迷っている方は、高圧ガス保安協会が出版している以下のテキストを手に取ってみてください。
6.冷凍機械責任者に関してよくある質問
冷凍機械責任者に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
Q.冷凍機械責任者に需要はあるのか?
需要は高まっています。近年、有資格者を必要としない冷凍機や地域熱供給の導入が増えており、有資格者を置いていない事業所も出てきているのです。しかし、その分、詳しい知識の取得証明になる有資格者を重宝する企業・現場が増えてきています。
Q.冷凍機械保安責任者との違いは?
冷凍機械保安責任者は、高圧ガスを安全に管理・使用するための資格です。冷凍機械責任者の資格を持った者の中から選ばれます。有資格者であれば、特別な試験を受けずに冷凍機械保安責任者として働くことができるのです。職務は、保安業務や定期点検・冷凍機械の指揮・指導業務など、基本的に冷凍機械責任者との違いはありません。
Q.資格取得のメリットは?
資格を取得すると、就職・転職に有利です。有資格者を重宝する企業・現場が増えてきているため、無資格者よりも採用される可能性は高いといえます。また、資格手当など昇給・昇格も期待できるでしょう。
Q.法定義務講義を受けない場合はどうなるのか?
法定義務講義を受けない場合、免状の返納を求められる可能性があります。定期的な受講が法律で義務づけられているため、資格を持つべき人ではないと認識されてしまうのです。受講を忘れていたということがないように気をつけておきましょう。
Q.検定試験の合格率は?
検定試験の合格率は、第一種・第二種・第三種ともおよそ60%です。難しい問題が出題されるわけでもないため、しっかり講義を受けておけば検定試験に合格できるでしょう。
まとめ
冷凍機械責任者は、冷凍機械に関する高圧ガス製造施設の保安業務をおこないます。冷凍機械責任者は製造許可を取得している事業所から選出しなければなりません。そのため、有資格者が事業所にいない場合は、有資格者を採用するか、ほかの事業所から引き抜く形になるでしょう。近年、有資格者を必要としない施設が増えていますが、その分、知識を有している証拠となる有資格者を重宝する企業・現場が増えています。資格を取得したほうが、就職・転職に有利となり、高圧ガスを製造する大規模施設で作業ができるでしょう。冷凍機械責任者の基礎知識をしっかり把握して、国家試験をパスするための勉強を始めてください。
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