大気汚染防止法施行令とは?公害防止管理者の役割を解説!
2016/07/08
大気汚染とは、有害物質が空気中に溶けこんだ状態のことです。
最近ではPM2.5が話題になることが多いでしょう。
一度大気が汚染されてしまうと、解消するまでに長い時間と手間、そして費用がかかります。
また、空気は国境など関係ありませんから世界中に汚染が拡散されることもあるでしょう。
そこで、今回は大気汚染を予防する法律である大気汚染防止法や、大気汚染防止法やその補足となる大気汚染防止施行令についてご紹介します。
大気汚染を防止するには、大気汚染の原因となる物質が発生してしまう場所の設備をしっかりと整えるのはもちろんのことですが、それ以外にもするべきことがあるのです。
この記事を読めば、大気汚染防止に必要なことが分かります。
公害防止管理者になりたい方もぜひこの記事を読んでみてください。
1.大気汚染防止法とは?
大気汚染防止法とは、1967年(昭和42年)に施行された大気汚染を防止することを目的にした法律です。
規制対象になるのは、工場などから出る排煙、建物などを解体するときに発生するばい煙、揮発性化合物や粉じん、そして自動車からの排ガスになります。
この法律が施行された当時は、違反者に対して罰則がありませんでした。
その結果、法律は作ったものの、全く大気汚染が改善する様子はなかったそうです。
そのため、1970年に大幅に法律を改正し、地方自治体の権限を強化して罰則を強化した結果、公害対策に効果が出始めました。
大気汚染防止法は現在、水質汚染防止法と並んで公害を予防する法律の要になっています。
また、大気汚染防止法は時代とともに少しずつ改正が加えられ、規制の対象となる物質が変化しているのです。
最近の改正は2015年で大気中に排出される水銀などの改正が定められました。
2.大気汚染防止法の内容とは?
この項では、大気汚染防止法の内容を少し詳しくご紹介しましょう。
大気汚染防止法では、ばい煙、揮発性有機化合物、粉じん、有害大気汚染物質、自動車排出ガスの5種類を規制していますが、具体的にはどのくらいの規制になっているのでしょうか?
2-1.ばい煙
ばい煙とはいおう酸化物や有害物質、カドミウムおよびその化合物、塩素、鉛などを指します。
一定規模以上の施設が「ばい煙発生施設」として定められているのです。
ばい煙の排出基準は、一般排出基準、特別排出基準、上乗せ排出基準があり、それぞれ大気汚染の激しさによって、適応されるものが変わってきます。
なお、総量規制基準は上記の基準に当てはめることが困難な大規模工場に適応されるのです。
この基準を破ると、ばい煙の排出禁止やばい煙の処理方法等の改善を申し渡すことが可能になります。
ちなみに自動車の排ガスも、このばい煙の一種に指定されているのです。
2-2.揮発性有機化合物
揮発性有機化合物とは、排出や飛散をしたときに気体である有機化合物です。
一定規模以上の施設が「揮発性有機化合物排出施設」と定められており、排出の規制と、業者の自主規制が求められています。
2-3.粉じん
粉じんとは、ものの破砕や体積により、発生したり飛散したりする物質の総称です。
人の健康に被害を生じる恐れのある物質を「特定粉じん」といいますが、現在それに当てはまるのは石綿(アスベスト)だけ。
特定粉じんの規制は大気1リットル当たりアスベストの繊維が10本以下とかなり厳しいもの。そのほかの粉じんは、「一般粉じん」といい、種類ごとに定められた構造・使用・管理に関する基準によって規制されます。
2-4.有害大気汚染物質
有害大気汚染物質とは、長期的に体内に取り入れると健康を害する恐れの高い物質のことを指します。
この物質は現在248種類が指定されており、その中でも特に優先的に対策に取り組むべき物質として23種類が定められているのです。
この23種類についてより詳しく知りたい方は、環境省の該当ホームページをチェックしてください。
大気汚染防止法では、これらの物質を排出する業者に対し排出状況の把握、排出抑制等を求めています。
なお、環境省のページからは、それぞれの大気汚染物質の排出基準もチェックできますので、ぜひチェックしてみてください。
3.黄砂とPM2.5 の扱いについて
最近大気汚染というと、黄砂とPM2.5が特に話題となっています。
黄砂とは中国大陸の内陸部にあるゴビ砂漠などから巻き上げられる砂のこと。
季節風にのって日本までやってきます。
PM2.5とは、微小粒子状物質ともいい、とても細かい大気汚染物質です。
細かい分肺の奥深くにまで届くので、心疾患や肺疾患を起こしやすく、呼吸器系疾患、循環器系疾患の原因にもなっています。
このPM2.5はばい煙や粉じん、自動車の排ガスなどからも出てきますが、日本で発生する量はごくわずかです。
黄砂やPM2.5 の発生源は現在のところ、主に中国であり、日本の法律では規制できません。
そのため、環境省では気象庁と協力して黄砂の飛散状況などを調査し、ホームページや天気予報などで発表することによって、注意を促しています。
該当ホームページはこちらです。
黄砂情報ホームページ
PM2.5については、ばい煙や粉じんの規制値と同じです。ただし、やはり中国からやってきたものは防げませんので、注意報などが出されています。
4.公害防止管理者について
さて、このように法律で規制されても、大気汚染を引き起こす物質を排出する企業が自己規制をしなければ、効果はありません。
そこで、この項では公害を防止する職務を行える公害防止管理者についてご紹介しましょう。
4-1.公害防止管理者ってどんな資格?
公害防止管理者は、大気汚染、水質汚濁、騒音、振動等の公害を防止するために技術的な管理を行う職務が行える資格です。
大気汚染に関する公害防止の職務を行える資格は、大気関係公害防止管理者といい、第1種~第4種まで種類があります。
4-2.大気汚染防止法と公害防止管理者について
ばい煙発生施設、特定粉じん発生施設、一般粉じん発生施設は大気関係公害防止管理者を選任しなければならない、と大気汚染防止法で定められています。
第1種~4種までのどの資格者を選任するかは工場の規模によって決まり、数字が小さいほど排出量の多い工場などで職務を行えるのです。
4-3.公害防止管理者が行える職務とは?
大気関係公害防止管理者が行えるのは、工場の中や敷地内の空気の検査です。
その結果に基づいて法令を遵守できるよう作業の工程や施設の維持等の技術的項目について進言を行えます。
4-4.公害防止管理者の資格を取得するメリットとは?
前述したように、公害防止管理者を必要とする施設はたくさんあります。
ばい煙発生施設だけでも100以上はあるでしょう。
しかし需要に対して、公害防止管理者はまだまだ足りない状況です。
ですから、有資格者に手当てをつけるなどして優遇する企業も少なくありません。
転職や就職に有利な資格といえるでしょう。
5.公害防止管理者になるには?
では、公害防止管理者になるにはどうしたらいいのでしょうか?この項では、大気関係公害防止管理者になるための方法や試験内容などを詳しくご紹介していきます。
資格取得を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
5-1.公害防止管理者になる方法
公害防止管理者になるには、認定講習を受けるか資格試験を受けて合格するかの2種類の方法があります。
認定講習を受けるには、技術士や計量士、衛生工学衛生管理者、薬剤師、衛生管理など、特定の資格が必要です。
詳しくは、産業環境管理協会のホームページをご覧ください。
なお、公害防止管理者の区分は6種類あり、その中でもさらに細かく分かれています。
そのため、自分が取得したい資格の認定講習が受けられるかどうかは、必ずホームページで確かめましょう。
大気関係公害防止管理者も1種~4種まであり、認定講習で得られる資格には限りがあります。
しかし、1種類でも資格を取得していると資格試験を受ける際に試験科目が免除になりますので、講習会を受講する資格がある方は受けておいて損はないでしょう。
なお、試験に受験資格はありません。誰でも受験できます。
5-2.大気関係公害防止管理者の試験内容とは?
大気関係公害防止管理者の試験は、最大で以下の6教科です。
- 公害総論
- 大気概論
- 大気特論
- ばいじん・粉じん特論
- 大気有害物質特論
- 大規模大気特論
すでに大気関係公害防止管理者の資格をどれでもいいので取得していて、別の種を受験したい場合は、共通科目が3年間に限り免除になります。
ですから、複数の種を受験したい方は、早めに取得しておきましょう。
大気関係公害防止管理者の場合は、公害総論、大気概論 、大気特論の3科目になります。すべての科目で60%以上の得点が合格基準です。
5-3.試験の申し込み方法
公害防止管理者の試験は、産業環境管理協会のホームページから申し込めます。
詳しいマニュアル等も書かれているので、落ち着いて申し込みましょう。
前述したように公害防止管理者はたくさんの種類があります。
大気関係公害防止管理者だけでも4種類もあるのです。
間違えて申し込んでしまうと、訂正が大変ですし、気がつかなければ試験自体が受けられません。
また、会社から団体でも申し込めるので、会社ぐるみで受験する場合は「試験対策委員会」などに申し込めばいい場合もあります。
ちなみに、平成28年度の試験は10月2日の日曜日に実施されるのです。
現在も申し込みは受け付けていますので、まだの方は早めに申し込みましょう。
5-4.免状の交付などについて
試験に合格すると免状が交付されています。一度免状が交付された場合は、更新などは必要ありません。
ただし、紛失したり破損したりした場合は再発行が必要です。この場合もホームページから申し込んでください。
5-5.勉強方法などについて
公害防止管理者の勉強方法は、独学と通信教材があります。
公害防止管理者はどちらかといえば、まだマイナーな資格のため参考書なども数が少ないでしょう。
また、産業管理協会では、自分たちで通信教育も実施しています。
試験元が実施してくれる通信教育ならば、完ぺきにこなせれば合格間違いなしでしょう。
ただし、「通信教育の内容が自分に合っていない」という可能性もあります。
この場合は、民間の通信教材を利用しましょう。講座を開いている業者は複数あります。
協会が実施しているものよりも分かりやすい可能性もあるでしょう。
また、勉強は毎日続けてください。週末にまとめてやろうとか試験が近くなってからやろうと思ってもうまくいきません。
毎日30分ずつだけでも勉強した方が、週末に10時間まとめて勉強するよりも効果的です。
大気関係公害防止管理者の合格率は2割~3割となっており、高いとはいえません。
試験難易度の「普通」に惑わされないようにしましょう。
6.大気汚染防止法に関するよくある質問
Q.自分の会社が大気汚染防止法の規制対象になるかよく分かりません。
A.工場を建てるときに調査が入っているはずです。分からない場合は工場長などの責任者に尋ねてみてください。
Q.工場から出る排煙などで具合が悪くなった場合はどうしたらいいでしょうか?
A.まずは病院へ行って診断書を取得しましょう。そうすれば、原因もはっきりします。
大気汚染が原因ならば、公害防止管理者に即連絡しましょう。
Q.公害防止管理者は、どのくらい勉強すれば取得できますか?
A.数字が小さい種類ほど範囲が広く、勉強時間が必要です最低でも3か月は勉強時間を設けましょう。
難易度の「普通」は特別なテクニックを駆使しなくても合格できるという意味で、決して問題が易しいわけではありません。
Q.女性ですが公害防止管理の仕事はできますか?
A問題ありません。今は女性のこまやかな気配りや心遣いが公害防止管理者に向いている、という意見も多いのです。
Q.通信教材はやはり協会のものが一番なのでしょうか?
A.そんなことはありません。民間のものの方が合っているという方もたくさんいます。ぜひいろいろと資料を取り寄せて検討してみてください。
まとめ
いかがでしたか?今回は大気汚染防止法についてご紹介しました。
大気汚染物質は文明的な生活をしている限りどうしても排出してしまいます。
そのため、その量をできるだけ抑えることが大切です。
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