貯水槽と受水槽の違いは?ためておく水の種類や利用方法は?
2015/11/06
2020/07/08
水を一度にたくさん使う施設に設置されているのが、貯水槽です。貯水槽とは、水をためる施設のこと。上水道用だけでなく、工業用や防災用に利用するための貯水槽もあります。ところで、貯水槽は受水槽や高架水槽といった名称で呼ばれることもあるのですが、水をためる設備の違いにはどのような違いがあるのでしょうか?
そこで今回は、貯水槽と受水槽の違いなどについてご説明します。上水道用に貯水槽をつける理由や手入れの方法などもご紹介しましょう。ビルのオーナーだけでなく、建築物環境衛生管理技術者の試験勉強中の方もぜひ記事を読んで参考にしてくださいね。
1.貯水槽と受水槽は何が違うの?
貯水槽とは、水をためる設備や施設の総称です。私たちの生活には、水が欠かせません。一般住宅の場合は、水道局がひいた配水管に各家の給水管を直結させ、給水栓へと水を運びます。しかし、一度に大量の水を必要とする設備の場合は、直結方式では間に合いません。
そこで、貯水槽に一度水をためてから改めて必要な場所へ送るのです。飲料用水として使うだけでなく、工業用や防災用としての貯水槽もあります。受水槽とは、貯水槽の一種で水道の配水管から水を引きこんだ、水道水を1階や地下に貯水する設備です。つまり、受水槽は貯水槽の種類のひとつになります。この受水槽をマンションやビルの屋上に設置すると、「高置水槽」と呼ばれるのです。
さらに、給水ポンプの吐出管に直結した密閉加圧の受水槽を「圧力水槽」といいます。このように、「貯水槽」だけでは設置場所や設備の種類が分かりませんが、受水槽や高置水槽という名称を使うと「どのような水」を、「どこ」に、「どんな設備」で保管しているのかすぐに分かるのです。
2.受水槽を設置する際の決まりは?
受水槽は、水道水をためておく設備です。ですから、飲料用に使われることも多いでしょう。設置場所は、屋外、屋内、地下室があります。ビルやマンションの屋上に設置すると、同じようなタンクを使っていても高置水槽になるため、管理方法も変わってくるのです。受水槽は、常にメンテナンスと管理が必要になります。
巨大な水槽ですから、管理を怠れば、すぐに水が汚染されてしまうでしょう。汚染された水を飲料用に使えば、感染症が発生する可能性もあります。ですから、壁面や床面、天井に60センチ以上の空間を開け、目視点検をしやすいようにしなくてはなりません。
また、ゴミや虫などが入らないように、オーバーフロー管を排水口に直接接続することは禁止されています。さらに、受水槽の水を飲用に使う場合は、1日の使用量を受水槽の容量の40%~60%に抑える必要があるのです。ですから、受水槽を備えた大規模な施設を作る場合は、1日に必要な水の量を計算したうえで受水槽の容量を決めなくてはなりません。施設で使う水は飲用だけではないのです。定期的な清掃消毒作業や、水質検査等、適正な衛生管理が持ち主には義務づけられています。
3.受水槽は誰のもの?
水道設備は水道局で管理するものと、建物の持ち主が管理するものがあります。受水槽は、建物の持ち主のものです。ですから、水道料さえきちんと収めておけば、どのような設備を作ろうと持ち主が自由にしてよいでしょう。その反面、受水槽の管理は持ち主が責任を持って行わなければなりません。受水槽にたまった水に菌が繁殖して食中毒などが起きた場合は、管理責任を問われるでしょう。
また、受水槽の点検や清掃などで断水しなければならない場合は、テナントへの説明や断水時間の調整なども行わなければなりません。もちろん、受水槽が壊れたり老化したりした場合は、持ち主が修理したり交換したりします。ですから、持ち主が管理できる規模の受水槽を造らなくては維持できないでしょう。
4.飲用水用の受水槽の管理方法は?
飲用水用の受水槽は、工業用や防災用の受水槽よりも厳重な管理が必要です。この項では、管理項目や頻度をご紹介しましょう。
4-1.清掃
受水槽を1年間に1回以上清掃することが、法律で決められています。清掃は業者に委託することが一般的ですが、その場合は貯水槽清掃作業監督者が設置されている業者を利用しなくてはなりません。
4-2.点検
必要に応じて受水槽の点検が必要です。受水槽本体だけでなく、ポンプなど付属の設備も点検しましょう。1年に何回などの決まりはありませんが、1回は行っておくと安心です。
4-3.検査
年に1度給水設備や水質の状態を検査することが義務づけられています。この検査でもし水質に異変が発見された場合は、すぐに対処をしてもう一度水質の検査を受けなくてはなりません。
5.受水槽が減っているって本当?
かつて、受水槽は小規模なビルなどにも設置されていました。しかし、現在は水道設備の給水圧の向上などにより、受水槽を使わなくても水道本管へ直に接続して給水するブースターポンプ方式が主流になっています。ここまで記事を読んでいただいた方はお分かりいただけると思いますが、受水槽の管理はなかなか大変です。電力で循環させていたとしても、貯めた水はいたみやすく、藻(も)なども発生しやすいでしょう。
また、清掃や水質検査、点検の費用もかかります。しかし、東日本大震災のような大規模な震災が発生すると、水道管が壊れて長い間断水が起こることもあるでしょう。断水が長期化すると飲み水はもちろんのこと、トイレも困ります。このような場合に受水槽が設置されていると飲料用としては無理でも、トイレ用に水源を確保することができるのです。ですから、貯水槽や受水槽を廃止した設備はいざというときのために緊急用の水を確保しておかなくてはなりません。
6.建築物環境衛生管理技術者の役割は?
建築物環境衛生管理技術者とは、通称をビル管理士といい、ビルの安全や衛生にかかわる全てのことを総括して管理します。ですから、受水槽の管理も仕事の中に含まれているのです。清掃や点検業者との交渉だけでなく、きちんと仕事が行われたかどうかの確認や結果の保管も大切な業務になります。
また、日々の受水槽のチェックも建築物環境衛生管理技術者の仕事です。ですから、水の状態が普段と違うと感じたらすぐに対処しなくてはなりません。
貯水槽と受水槽の違いまとめ
今回は貯水槽と受水槽の違いなどについて説明しました。
まとめると
- 貯水槽は水をためておく設備の総称。
- 受水槽は水道水をためておく設備のことであり、貯水槽の一種である。
- 受水槽をビルやマンションの屋上に設置し、階下へ配水するポンプをつけると高置水槽になる。
- 受水槽は清潔さを保つために設置の決まりがある。
- 定期的に清掃や点検、検査をしなければならない。
ということです。
水道管も古くなれば赤さびが浮いて水質に影響が出ます。受水槽も同じこと。メンテナンスをこまめにしなければ、すぐに飲料用として適さなくなるでしょう。
また、工業用や防災用の貯水槽の場合は水道水ではなく雨水や井戸水を使用する場合があります。しかし、この場合も作りっぱなしで管理しなくてもよいということにはなりません。池や沼を見れば分かるようにたまった水は腐りやすく、カビや藻(も)も発生しやすいのです。ですから、管理をしっかりと行いましょう。
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