建築物環境衛生管理技術者の名義貸しとは? 発覚した場合の罰則などを解説
2018/09/14
2021/04/07
「建築物環境衛生管理技術者の資格を取得していると、名義を貸すだけで定期的にお金がもらえる」、こんな話を聞いたことがある人はいませんか? 建築物環境衛生管理技術者は一定以上の床面積を持つ特定建築物には選任が義務づけられています。しかし、有資格者しかできない仕事が毎日あるわけではありません。そこで、「書類上は雇用していることにしておいて仕事があるときだけ来てほしい」と思っているビルの所有者もいるでしょう。
そこで、今回は建築物環境衛生管理技術者が名義貸しを行う問題点や、罰則などについて解説します。
この記事を読めば、建築物環境衛生管理技術者の資格取得方法も分かるでしょう。建築物環境衛生管理技術者の名義貸しを求められて迷っている人は、ぜひ読んでみてくださいね。
1.建築物環境衛生管理技術者の基礎知識
はじめに、建築物環境衛生管理技術者はどのような資格かということを解説します。
1-1.建築物環境衛生管理技術者とは?
前述したように、建築物環境衛生管理技術者とは建築物の維持管理や衛生管理の監督業務を行うことができる資格です。特定建築物とは、百貨店・学校・事務所・旅館などが該当します。特定建築物のうち、床面積が3,000㎡(学校の場合は8,000㎡)以上ある建築物は、建築物環境衛生管理技術者を選任する義務があるので、有資格者は常に一定の求人があるでしょう。
1-2.建築物環境衛生管理技術者の仕事内容
建築物環境衛生管理技術者は、ビルメンの統括やビルの維持管理に関わる業者との折衝、建物を衛生的に維持管理するために必要な記録の作成と保管が主な業務です。管理する物件によってはテナントとの折衝やクレーム対応、自治体との折衝も業務のうちに入ります。ビルメンの管理者といえばイメージしやすいでしょう。
1-3.資格取得するメリット
前述したように、特定建築物の中には建築物環境衛生管理技術者の選任が義務づけられているところがたくさんあります。「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」では、建築物環境衛生管理技術者が複数のビルで業務を行うことが原則として禁止されているので、東京や大阪など都市部ほど需要が高いでしょう。また、管理者的な立場を任されるため、昇進や昇給も期待できます。転職や就職だけでなくキャリアアップにも有利です。
2.建築物環境衛生管理技術者の名義貸しとは?
この項では、建築物環境衛生管理技術者の名義貸しが行われる理由や問題点を解説します。
2-1.名義貸しとは何か?
名義貸しとは、資格を持っている人が資格や国の許可が必要な業務を行っている場所へ、申請や登録のためだけに名前を貸すことです。名義貸しは、公共の利益を損なう可能性があるので違法となっています。
2-2.建築物環境衛生管理技術者の名義貸しについて
建築物環境衛生管理技術者は、選任の義務はあっても常駐する必要はありません。そのため、基本的には複数の建物に同じ人が建築物環境衛生管理技術者として選任することが基本的に禁止されていますが、以下のような場合は特例として兼任が認められています。
- 職務遂行に支障がないこと(建物同士の距離が近く移動が容易、すべての建物の床面積の合計が5万㎡未満)
- 統一的管理性が確保されていること(複数の建物の持ち主が同じ)
つまり、この条件が満たされない場合、名義貸しに該当する可能性があるのです。
2-3.名義貸しの問題点
建築物環境衛生管理技術者は、建物の衛生管理の責任者でもあります。たとえば、選任を受けている建物で衛生管理上の問題があった場合、責任はビルの持ち主と建築物環境衛生管理技術者にあるのです。場合によっては建築物環境衛生管理技術者が罰則の対象になることもあるでしょう。そのとき、「自分は名義を貸していただけ」と言い訳してもとおりません。また、名義貸しが発覚した場合、30万円以下の罰金が科せられます。それだけでなく、信用も落ちるでしょう。ですから、頼まれても名義貸しはしないようにしてください。
3.建築物環境衛生管理技術者の資格取得の方法
この項では、建築物環境衛生管理技術者の資格取得方法を紹介します。
3-1.資格取得方法
建築物環境衛生管理技術者の資格を取得するには、2つの方法があります。1つはビル管理の実務経験を2年以上積んで日本建築物環境衛生管理教育センターが主催する試験を受けて合格する方法です。もう1つは、日本建築物環境衛生管理教育センターが主催する講習を受けて修了試験に合格する方法になります。ただし、講習は医師や薬剤師などの資格を取得するか、大学・高校を卒業したりした後、環境衛生監視員や建物の衛生管理を指導する実務経験を積むなど受講条件が厳しいのです。さらに、講習時間は103時間もあり、費用も10万円以上かかります。資格試験の合格率は23%前後と決して高くはありませんが、短時間で資格を取得したい場合は、試験を受けるのがおすすめです。
3-2.試験概要
建築物環境衛生管理技術者の試験は以下のような7科目の学科試験です。
- 建築物衛生行政概論
- 建築物の環境衛生
- 空気環境の調整
- 建築物の構造概論
- 給水及び排水の管理
- 清掃
- ねずみ・昆虫等の防除
試験範囲がかなり広いので、勉強は計画的に行うことが大切になります。試験は毎年10月に行われ、試験会場は全国の主要都市です。試験を受けるには、日本建築物環境衛生管理教育センターで願書を購入して必要事項を記入し、郵送して申し込みましょう。電子申請は受け付けていません。受験料は13,900円です。
4.建築物環境衛生管理技術者に関するよくある質問
この項では、建築物環境衛生管理技術者に関するよくある質問を紹介します。
Q.建築物環境衛生管理技術者の試験は、すべての都道府県では行われないのですか?
A.はい。試験会場は東京や大阪など主要都市に限られているので、遠方の人は宿泊準備も必要になります。
Q.建築物環境衛生管理技術者でないと行えない仕事は何でしょうか?
A.建物を衛生的に維持管理するために必要な記録の作成と保管は、有資格者しか行うことができません。また、ビルメンの統括管理を任されるでしょう。
Q.職務遂行に支障がない距離は、どのくらいですか?
A.明確な規定はありませんが、徒歩で移動できる距離が望ましいでしょう。
Q.建築物環境衛生管理技術者の試験に科目合格はありますか?
A.いいえ。科目合格はありません。
Q.建築物環境衛生管理技術者は、40代以上で取得しても資格を活用して働けますか?
A.もちろんです。有資格者の中には70代でも働いている人が珍しくありません。
まとめ
今回建築物環境衛生管理技術者の名義貸しなどについて解説しました。建築物環境衛生管理技術者の選任は、条件を満たせば兼任が認められているので、つい兼任感覚で名義貸しをしてしまう可能性もあります。しかし、前述したような条件を満たさない場合、兼任ではなく名義貸しになってしまうので注意しましょう。
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